1935年生まれ
ウルグアイ在住
ウルグアイ軍事政権中にゲリラ活動をして4回、合わせて約13年間の投獄。劣悪な獄中生活で精神を病んだ時期もありました。牢獄で化学系の本を読むことが許され、生物学、農学、医学、獣医学、人類学の本を読み漁り人間とは何なのか、問い続けました。出獄後政治家を志し2010年から2014年まで大統領を務めた
そう、私は世界の人から
「世界で一番貧しい大統領」といわれている
見ての通り、3部屋しかないうちに住んでいるし、仕事にも
友だちからもらったフォルクスワーゲンで行く
どこへ行くにも、同じチェックの上着だし。まあ、おかげで私のトレードマークになっているよ
大統領とは
大統領になりたてのころは、公用車に乗るようにいわれた
だが、わたしのためにドアを開けさせるのが嫌でね
それに後部座席には絶対座らなかった
だって、攻撃された時
運転手だけ犠牲にするわけにはいかんだろう
わたしも一緒に戦わねばならんからね
多くの方は、大統領は豪華な生活をしないといけないと思っているんじゃないかね
私はそうは思わないんだ。大統領も国民の1人にしか過ぎないんだ
この農園は出獄した時に買ったんだ。改修しながらまわりの土地を買い足してきたんだ
すると、地価がどこまで上がるのかわかる。それによって地価がどれだけ課税するのが正しいか、わかるんだ
大統領が一握りの金持ちと同じ生活をしていたら、国で何が起こっているかわからなくなる
ほとんどの国民の生活レベルが上がれば、私の生活レベルも上がるだろう。それがいいんだ
人気が欲しくてこんなことわ言っているんじゃない。何度も考え抜いた末の結論なんだ
過去
ずっと戦争だったよ。第2次世界大戦だ。戦争中、この国では仕事があったんだ。ウルグアイは世界で最も豊かな国になったんだ
人が死んでいる時にウルグアイではビジネスをしていたんだ
悲しいことだ
1940年代のウルグアイは、こんな風に豊かだった
南米のスイスと呼ばれるほど福祉は良かったし、安定した民主主義の国だった
戦争の後、立ち直ったヨーロッパが我々から安く買い、我々に高く売りつけたからね
ウルグアイは経済的に不安定になって政権は次第に強権的になった
投獄
わたしは4度投獄されているんだ。ゲリラ活動していたんだよ。武力で政権を倒すことも辞さないと考えていたら
1985年の終わり、私は出獄した。軍事政権が終わったんだ
自由の身になった私は、痛みや苦しみを嘆く気持ちは消えていた
孤独
獄中での孤立無援の状態を経験したからこそ、いかに僅かなもので幸せになれるかを学んだんだ
私たちをひどく扱った人間を憎む気になれなかった
人生は未来だ
過去じゃない
もちろん、過去は厳然と存在する
いや、過去を忘れるのでない。そんな簡単に忘れられるものか
これまで起こったことを、どうやって忘れろっていうんだ
だが、重要なのは
未来のために過去を乗り越えることなんだよ
解放された後、わたしは沢山の人と話しをした
牢獄の孤独の中で膨大な読者をし、外に出た時は様々な人と関わって、わたしはある結論にたどり着いたんだ
人は孤独では生きられないということに
詩的な意味で言っているんじゃないんだ
人間は本質的に、群れをなす社会的な生き物なんだよ
人類の歴史の9割は、集団の中でも起こっているんだ
大統領になったとき、この、人間が生まれながら持っている特性を肝に銘じたんだ
だから私は沢山対話して、できるだけ多くの人と関わってもらおうと思った
恨み、つらみとか、報復とか、政治的な思想つまりイデオロギーから完全に自由な政府にしたかったんだ
時間
残念ながら私たちは
働いて使い捨てる文明を持ってしまった
そんな文明では
長持ちする物は作れない
新しいものを沢山売らなくてはいけないからね
こうして環境を破壊していくんだ
しまいにはいくらあっても足りなくなる
そして、際限なく働かなくてはならない
人は何のために生まれてきたんだと思う?
働くため?
発展するため?
人生は短く、あっという間だ
余計な物を消費するために働いて、そのために時間が逃げていったとしたら
それは幸せなんだろうか?
仕事
働くことは必要だ
働かない者は、働く人に負担をかけることになるし、仕事は希望でもある
お金
でも、色んなものを買い込んで、支払うために人生を費やすなんて、どうかしている
物やお金を貯める代わりに
生きるために時間を使うことだ
一番大切なのは命なんだ
お金で命を買うことはできないんだよ
命は奇跡なんだ
モノを所有すること
現代ほど人間が多くを所有したことはない
これまでに知識を得たこともない
100年前に比べて、平均寿命は40年以上伸びた
人口は倍になり、食料の量も倍になった
私たちは生産される食べ物の3分の1を捨てて8億人が飢えている
世界では1分間に数百万円ドルが消費され、数百万ドルが軍事予算に費やされている
なのに貧困を救うお金がないということは、私に言わせれば恥じらいを持たないということだ
こんなにも世界は資源であふれているのに、かつてないほど富は集中し、貧富の差は激しくなっている
お金がないと政治家が言うとしたら、お金のある人から徴収せず、頼むことも、彼らのポケットに手を突っ込むことのできない臆病者の政治家だからだ
だから私は政治の世界で闘ってきたんだ。簡単に言えば、弱者のために少々厚めにベーコンを切るということだ
私が考えるような世界は、実現可能なのだろうか?
いや、難しいと思うよ
私たちはつい、人生の時間の使い方を間違えてしまう。自由をどこかに忘れて、自由が傷ついたことにすら気づかない
貧しさ
彼らはこう言っている
「貧乏とは、無限に多くを必要とし、もっと欲しがることである」とね
本当に貧しい人とは社会とつながらずに生きている人だ
ビジネスが人生で最も大事なものだと思うなら、私は何も言うことはない
命
私が最も大事だと思うのは、命と幸せなんだ
だって奇跡なんだよ、生きているということは。何よりも価値があり、短く、二度と戻ってこない
だから、この世にいる間にできるだけ幸せに暮らすことを心がけるべきなんだ
大統領だった5年間、私の一番の課題は貧富の差を減らすことだった。人々は多少暮らしやすくなったと思うけれど、まだまだだ
教育
最も大事なのは教育だ
それは、この国の20年後を考えることなんだ
大統領でいたときの最大の後悔は、教育にもっとお金を使えなかったことだ
社会の不公平を減らし、正義を下支えするものが教育だったのに
教育と民主主義は切り離せない。これらは、多くの人々の生活を良くするものだからね
しかし私は歳だ。いつまでも、何でもできると思ったらいけない。次の人に未来を託さないといけないんだ
私が後悔していることは
何をしなかったではなく
何をしなかったかだ
若い人に同じ後悔をさせたくない
人生はずっと続く学びの場です
時には間違った道に迷い込む
時にはお互いの足を踏んでしまうこともある
政治
50年前、私たちは富を平等に分配することで世界を改善できると信じていた。イデオロギーで世の中を考えていた
でも今、人間の文化を変えないと何も変わらないことに気づいたんだ
大事なのは一般常識なんだ
確かなことは、現実を生きている人の生活が良くなるように闘わなければならないってことだ
そのためには全ての政党と合意して政治を進めないといけない
反対意見
反対意見は、パンと同じくらい必要なんだ
民主主義
民主主義が素晴らしいのは、永遠に未完成で、完璧にもならないからだ
そして、平和的な共生を可能にするからだ
民主主義は、異なる考えの人を尊重するからね
これが社会を生きやすくする揺るぎない価値なんだ
理想
私は理想のために闘っているんだよ
ただし、国民の人生を理想の犠牲にしてはならない
私みたいな小さい国の大統領が注目されるようになったのは、
欧米式の政治や社会のシステムが世界的な危機に直面したからだ
と説明する人がいるが、違うと思うね
星がほとんどない空で輝いているだけなんだ
ちょっと頭を使うことよりも、支持率や名声や着るものばから気にしているリーダーたちによって、空が陰っているだけなんだ
だからふつうに光る星が、輝いて見えるだけさ
外国の政治家たちは、中身があることわほとんど言わんのだよ
だから私にお鉢がまわってくるんじゃないかね
私は意見をはっきり言う
彼らが賛成だろうが反対だろうがおかまいなくね
歴史
政治家は歴史を勉強しないといけないんだ
人類の重要な文化の誕生や発展は、片隅の小さなコミュニティで生まれているんだよ
それはつまり、きみたちのコミュニティでも生まれることだ
大きな変革は、小さな村から生まれるんだ
だからこそ、一人でひとりがちょうせんすることが必要なんだ。挑戦しないことには、何も成し遂げられない
勇気を持って、歴史の奥深くに閉ざされた古来の社会を見てください
石器時代の人になれと言っているのではなく、人間社会を守るための寛大な精神を学んで欲しいのです
哲学
今の政治には哲学がない
1940年代の政治家が書いた論文を読むと、今と比べていかに進歩的だったことか。昔は考えさせる政治家がいた。哲学を持った政治家がいた
奇跡
歴史における偶然についても話そう
偶然なんか存在しないというのは真っ赤な嘘だ
世の中には想像を超えた出来事
つまり偶然が存在する
因果関係関係ーこうだったからこうなったということだ
そして偶然
この二つは確実に存在する
歴史を学べば、それがよくわかる
ヨーロッパ中世の学問に、スコラ哲学がある
これは、古代ギリシャの「スコレー」が起源で、これが「ひま」という意味なんだ
古代ギリシャでは、スコレーは議論する時間のことだった
ギリシャ時代の人々は大きな広場に集まって、話し合い議論した
こうした社会に、スコレーつまり「ひま」が重要だったんだ
スコレーがあるから哲学が生まれた
哲学は大学で学ぶだけじゃない
人生を通して抱き続ける問いなんだ
私たちはみな哲学者なんだよ
哲学は、製品として売ることができないから市場では相手にされないが
哲学を持たなければ、世の中に溢れている物事から本物を見つけることができないだろう
「ひま」は無駄じゃない
人が話し合う時間なんだ
時間がかかるものではあるけど、それが「生きてる時間」なんだよ
対話
きみとこうしてじかに向き合って
同じ時間を共にすることが素晴らしいんだ
私は、人間は限りなく良い社会を築けると信じているんだ
そのためには、古代に目を向けることだ
歴史は化石ではなく、未来のための果実なんだ
寛容
古代の社会から寛容さを学ぶことだ
寛容さは、命を守るために大事ことだよ
幸せ
シンプルに理解しよう
幸せでいるためには、他人の命を必要としていることを
個人は社会に属しているんだ
社会の中の一人だからこそ、個人として生きられるんだよ
社会の歩みがあって。私たちは向上していけるんだ
人間
人間は集団生活する動物だ
他人を必要とする、奇妙なサルなんだ
一人では生きていけない
だから、共有する理想を掲げないといけないんだ
多様性
そのために、互いに親しくなる努力をし、多様性を尊重する文化を再建しなければならない
多様性が世界を豊かにし、命を尊重することにつながるんだ
景色を見てごらん
花も木も色々あるから美しい
バラエティのないのっぺらぼうな世界など、ぞっとする
多様性は、私たちのそれぞれの独自の文化から生まれている
奥深くに隠れている我々自身を表現することで多様性が見えてくる
鏡で自分を見つけることだ
そして現実と関わることだよ
関わりあうことは、互いの理想を抱き合うことなんだよ
正義
憎しみは建設的でないんだ
報復が、正義という名のもとに行われることが世界にはいやというほどある
そんな世界は、私はこれぽっちも信用していない
許すこと
過去を乗り越えること
そして異なる意見にオープンであることが大事なんだ
イデオロギー
最悪なのは
イデオロギーのせいで、現実を現実として受け止められなってしまった時だ
私も若いときは、イデオロギーを旗にしていた
しかし、現実はイデオロギーじゃない
人々が生きているということなんだ
その重要性に気がついたんだよ
戦争
昔は、崇高な目的を達成するための正義の戦争と、悪い戦争があると思っていた
しかし武力による犠牲と苦しみを肌身で知って、どんな戦争であれ
社会で最も弱い人の犠牲で終わることを知ったんだ
最低な話し合いは
最高の戦争に勝るんだ
人生
人生というものは、刻一刻とあなたから逃げていきます
でも、足りないからといってスーパーで追加の人生を買うことはできません
だから
人生を生きるために闘ってください
人生に中身をあげてください
あなたは自分の人生の方向性をある程度決められます
自分の人生の道を切り拓いていけるのです
マーケットに自分の命を売り、必要でないもの買いあさり、ローンを払いながら人生を過ごしたら、あっという間に私のような老人になってしまいますよ
もしも私が獄中生活を経験しなかったら、私の人生は違っていただろう
あのつらい時代がなければ、今の私はなかったと思う
人は、良い時よりも痛みのある時からより学ぶことができるんだ
私はそれを身にしみて知っている
そのことを若い人に伝えたいんだ
挫折
挫折から起き上がることを
人は生きていると、何度も挫折を経験する
誰だって問題を抱えているんだ
そこから何度も這い上がることが大事なんだよ
戦う前からあきらめている連中を見ているとイライラするんだ
勝ったことをひけらかす必要はないが、勝つと信じて前に進み、人生に意味を与えるべきなんだ
人生みたいな複雑な現象に、どうやったら勝ったと言えるんだろうね?
たとえ20回挫折しても、やり直す価値があるんだよ
私がそうだったんだから
人生を意味あるものにするかどうかは君次第だ
たとえ困難でも、もう少しと挑むことだ
敗者とは
肩を落とし自らを放棄してしまった人たちのことだ
人生を投げてしまうのは
店で命を売るようなものなんだよ
どうでもよい買い物をして人生を使っているうちに、一文無しになったきみは
この世で一体何をしたかったのだろう?
しかしよく生きるために闘い、後の者たちにそれを伝えようとしたならば
その息吹は丘や海を渡り、かすかな記憶となって残るだろう
与えること
人生は受け取るままではなく、何より、持っているものを与えるものだから
自由
自由を奪われてはならないよ
死んだら楽園にいくという宗教があるけれど、楽園はこの世にあるべきなんだ
楽園の鍵は自分の心に、自分の意思にある
本当らしいことに惑わされてはいけない
死後
戦争で死んだからといって
その先には楽園もありませんし
美しい人が待ってくれてるわけでもない
そこで終わった、それだけなのです
あるのは別のものです
それは、どんな状況にいても
この短い人生をフルに生き
人生を愛し
そのために闘い
人に伝えようとした美しさです
人生は貰うだけではだめなのです
まずは自分の何かをあげることなのですどんなボロクソな状態でも、必ず自分よりも悲惨な状態の人に何かを与えられます
若さを失わないで
人生をたっぷり味わいなさい
もっと生きることをめがけて