井上嘉浩
麻原の側近。地下鉄サリン事件など様々なテロ事件に関わり指導の役割を果たしオウムの申し子と呼ばれた
1969年 京都で旅行会社に勤める父、専業主婦の母の次男として生まれる。父は職業柄家を空けることが多かった井上家は一家団欒はあまりなかった
連帯保証人となった父は借金の返済に追われる。父を責める母。家庭は諍いの場となり 母親は鬱病になり寝込んだ。子供たちは祖母が面倒を見るようになった。祖母と幼稚園から帰宅した嘉浩は母の自殺未遂を目撃する
それは彼の心に暗い影を落としたのか、井上少年はよく金縛りにあっていた。釈迦のように悩み抜いた嘉浩は密教、ヨーガなど惹かれ仏教などの本を読み漁る
スピチュアル体験
高校受験を控えた井上少年。毎日睡眠時間を削って猛勉強に疲れ果て眠っている時、スピュチアル体験(不思議な夢)を見る
睡眠不足と不定期な睡眠による自律神経の乱れによる金縛りである
虚無感
毎日電車に押し込まれ
心さえも失い
ちっぽけな金にしがみつき
ぶら下がっているだけの大人たち
子供の夢は
時と人波にけずられ
もろもろになり
街角に転がっている
この世の中では
本当の自分は
見つけられない
(中学校の卒業文集)
現世から生きづらさを感じた井上はその約10年後、電車に押し込まれた会社員たちを正義の名の下に救済してしまう
睡眠時間を削った猛勉強のかいもあり名門洛南高校入学
阿含宗に入信
超能力修行の阿含宗に入門する。彼は最も熱心に修行した。「霊性とは、どのようにすれば高められていくものなのでしょうか?」先輩信者たちに聞いてみた。しかし誰も明快な答えを出してくれなかった。阿含宗では井上は不完全燃焼を感じた。井上は本屋で麻原の空中浮遊の本を見つけ読み耽る
百人近くの人が麻原のシャクティーパットにより覚醒した
疑問
一生かかっても覚醒できるかわからないのに、他人のエネルギーによって覚醒するなんて‥そんなことありうるだろうか?
オウム幹部たちは麻原を最初胡散臭いと思っていた。疑問、違和感を覚えたらそいつは詐欺師
高二の夏休み麻原の本を読んで実践した井上は神秘体験をした。「麻原に会いたい」井上は母を説き伏せオウムのセミナーに参加した井上少年は麻原と初対面する。井上は麻原を理想の父とみなした。詐欺師麻原からみれば中2病少年を騙すなど朝飯前。麻原に魅入られた井上は別人のように変わりオウムにのめり込んでいく
人生では、解脱することが最も価値のあることなんだ。解脱することこそ、両親に対しても最高の恩返しになるはずだ
セミナー参加後「出家する」と言い出す。両親は猛反対する。両親は麻原と相談の上で、出家は大学卒業してからと約束させた。麻原の態度に感心して母まで入信してしまう
絶えず麻原のことを考えていました。寝る前にもグル、学校でもグル。いつの間にかグルグル
とりわけ熱心な井上の教団でのあだ名は「グルグルパー」
授業中にまで瞑想修行したほど宗教にハマったそうで 学校の成績は下降していく
井上の卒業文集
当時私はいずれ来るハルマゲドンによって何もかも滅んでしまうなら、今の現代社会の生活に何の意味があるんだ、多くの人を助けるためにハルマゲドンの道を歩む社会をなんとか変えなければいけないと真剣に信じていました。麻原はこれをヴァジラヤーナによる救済と呼び、神々の意思により自ら武力をもって現在社会を破壊することで、悪業を積み背負いながら、新しい平和な社会を切り開こうとしているとしていると私は信じていました
ノンキャリア
東京の大学に通う。オウムの弁当屋で宅配便のワークをやらされる。流石に弁当屋は「修行のために出家したのに、なぜ自分で弁当かいにいけない奴にそこまでやらねばならないんだ?」と不満を感じた。オウム活動のため忙しく(睡眠時間三時間ほど)学校に通えず中退
オウムは学歴社会と分かった。学歴のある人がリーダーになって、学歴がない人ふ雑用に追い立てられた‥僕はこれから、オウムの中ではノンキャリアでやってかなきゃならない
ノンキャリアの井上は誰よりも教祖に帰依していた
麻原 「グルから「ポアしろ」と言われたら、両親のことをポアできるか」
井上「尊師からやれと言われればやります」
誰よりも尊師に忠実な井上はノンキャリアでありながら、わずか18歳で指導者になった
オウムの申し子、修行の天才
洛南高校でも洗脳されるまでは成績良好。極真空手を習い。中学時代にはサッカー部に所属、高校時代は駅伝のメンバーに勧誘された井上は高い身体能力を持っていた。とりわけ難易度の高いヨーガ技術を持っていた
澄んだ瞳の青年
1991 11月 麻原彰晃が信州大学に講演会に訪れた。坂本弁護士失踪で話題のオウム真理教。信州大学で天文を学ぶ髙橋は非常に興味を持った
「麻原彰晃の話をじっくり聞いてやろうではないか」(洗脳される人の特徴)
講演後、髙橋は麻原に質問した。麻原はスマートに答えた。髙橋はオウムに引き込まれてる感がして会場を後しにした
すると、髙橋に「じっくり君の話を聞きたいんだけど」井上嘉浩という澄んだ瞳のオウム信者に声かけられた
髙橋のアパートに井上を招き入れると何故か 電球が切れた。替えの電球もきれてしまった。井上は壁にかけてある絵をみて
「あの絵は君が描いたものなのかい?」
「そうだよ」
「あそこに描かれている赤色から白銀色へと広がる世界は、君には実際に見えているものなのかい?だとしたら驚きだね。ちょうど僕にもあの絵のような光景が見えていたんだよ‥君はあの絵の世界に漂ったことがあるかい?
あそこに見える赤色の層の世界は君の心の闘争的な気質を反映していて、君はまさにその空間でもがいている
苦しみながらそこからどんどん上昇していき、やがて霧が晴れわたってまばゆいばかりの白銀の世界が切り開かれようとしているんだが、君はまだその入り口を垣間見たに過ぎない。それにしてもこの光景は、瞑想修行者ならばたびたび見ている世界だ。驚いたよ‥」
髙橋は井上に感銘を持ち、それから数分もしない内にオウム真理教の入会手続きをしてしまった。このように井上は1000人以上の人をオウムに勧誘したという。彼は軍事評論家を装い第一空挺団の自衛官3人と警察官まで信者にした
直感力が鋭く、いつも心の中を読まれているような気がした(井上にスカウトされた元自衛)
別名「井上教」と呼ばれる
悪童
彼の評価は二つに別れる。「悪童アーナンダー」と呼ぶ者もいた
裏表のある人
複数の女性信者と破戒していた。井上は「相手が誘ってきた」というが女性信者たちが「井上が迫ってきた」と述べる
自分をよくみせるために人を陥れようとする 深山(オウム元幹部)
洗脳地獄
オウムは性行為は破戒である。麻原はわざと若い女性ばかり井上の周りにおいた
とうとう井上は女性信者との破戒をしてしまう。罰として麻原から4日間コンテナの中で断水、断食する刑を与えられた。3日目に雨が降ったため何とか生き延びた。4日間の断水、断食後麻原の前に呼び出されると、なんと麻原 井上の前で高級メロンを何個も美味しいそうにムシャムシャと食べながら
すまなかったな
幹部会議では井上を破門にする意見もあったが私が止めた
その優しい言葉に井上の信仰は更に強まった。その後教祖の部屋に行った井上は、好きな女性が麻原のベッドに横たわっているのを目撃し動揺しましたが、それでも麻原の忠誠心は揺るぎませんでした
カーボンの竹刀でボコボコに叩かれたり、皆の前で叱責された
「井上に囚われている女性サマナは、メス豚に生まれ変わる」と説法で話し信者たちの前で公開処刑されたこともあった
洗脳された井上はグルに対する恐れのため麻原のいいなりだった
井上は札束を持ち歩いていて色々買ってもらった。都内で高級マンションに住んで美味しいものを食べていた(麻原おっさん地獄)
飴とムチを使い分け調教して依存させる。DV夫と妻のような関係だ
落田さんリンチ事件を目の当たりにした井上は良心の葛藤に苦しむ。しかしオウムから脱走した信者を執拗に探し抜く教団の本質を知り「逃げても捕まって殺される」と学習性無力障害に陥った様子
このような事態に陥ったのは自業自得です。落田さんの事件後教団にとどまった大きな要因に、下向すれば同じように殺害される恐怖がありました
これは人々の救済を願っていたこととは全くの自己保全でした‥自分のなしている矛盾に対してまるで罪の意識がなかったからだと思います
麻原に対する恐怖という洗脳地獄に落ちた井上は様ざまなテロ事件にひきずりこまれていく
1995 地下鉄サリン事件では指示役で活躍
井上は逃亡した。「オウムの申し子」と呼ばれる井上の指名手配は連日マスコミに報道された。逮捕時は大々的に報道された
井上は殺人をやっていない。いや、そこから逃げている。あいつは、多くの事件に係りながら、そこから逃げる。不思議な奴だ
救済
洗脳されていた井上は黙秘を続けた。そんな井上に救いの手を差し伸べたのは井上の両親だった
君があんな形で世間に名前を出してから君の両親、そして兄の人生も、これまでとは全く違った人生軌道を歩いていくことを余儀されていますが、誰もこのことを恨んでいません。寧ろ、どうしてもっと早く、君が加担して、色々行なっていることに気がつき、君に忠告できなかったのだろうかと後悔の念で一杯です‥
親兄弟の気持ちからすれば、君が関与したときみの口から知らされるものなら、諦めたもつくが、君が肝心なことに黙秘を続け、君の口から一切のことが明白にならなければ死んでも死にきれないというのが正直な気持ちです‥
今の君にこういう言い方は酷いかもしれませんが、君は働き盛りのご主人を亡くされて、これからどういう生活をしていったらいいか途方に暮れている、ご家族のことを考えたことがありますか?‥
全ての人間には、みずからの人生を運命の許される限り謳歌し、そして家族、友人とその人生を全うする権利が与えられているはずです
それを、君は何の必然性も理解しないまま、無残にもその命を奪ってしまったという厳粛な事実に、真っ向から目を向けて欲しいと、父は切に望みます、そうすれば、今、君がなさねばならないことが何であるかの答えは、おのずからでてくるはずです‥父は君の父親として、色んな意味において君を信じます
それは君の父親として当然のことです。後において悔いを残さない日々てまあって欲しいと父は心から望みます 父より
母のテープメッセージ
よっちゃん。家族みんなでよっちゃんのことを見守ってます。だから、何も心配しなくていいです。正直に全てのことを話すのです。それが、被害に遭った方々にあなたができる唯一のことです。全てを話して罪を償ってください‥お母さんは一生懸命、祈っていますからね‥
井上は号泣した。その姿を見た取り調べ菅まで貰い泣きした。その後も父は手紙を書き綴る
井上は長い葛藤をえてオウムから脱退を決めた
1995年12月26日 井上の脱会はマスコミにトップニュースで報道されてされた。井上はオウムは偽りとオウム信者に訴えた
自分自身の内側に宿っている仏性こそが究極の真理
不仲の両親を目の当たりにして大人、人生に失望し悟りの道をひらこうとして詐欺師にだまされた井上をカルト地獄から救済したのが
頼りないと思い込んだ母と
仕事人間の父だった
井上がテロリストとして報道、逮捕をうけたあと不仲の両親が結束し、国民的犯罪をした息子を理解し受け入れた。無償の愛で包み込んだからこそ息子の魂を麻原から取り戻したのだ
カルトに騙される若者を減らしたい
取調べも積極的に応じ裁判で自分の知っている限りを証言することを決意した
麻原彰晃に立ち向かい事実を明らかにすることにより、今私のできる唯一の償を実践しようと誓います
法廷での師弟対決
麻原に対する恐怖に支配されていた井上は最初は麻原に怯えて声も小さかった
麻原
麻原はサリン事件も井上と村井(暗殺)が計画した。自分は辞めさせようとした
井上
リムジンの中で麻原がサリンをまくよう指示した
地下鉄サリン実行犯たちは村井の指示に従った。しかし、村井は暗殺されている。井上のリムジン証言が地下鉄サリンで麻原を有罪に立件できた
旗色が悪くなった麻原はついには問いかけに全く応じず意味不明な言葉を呟きはじめた
当時、あなたはヴァジラヤーナの救済は自分で悪業を積んでカルマを背負うことで救済すると言っていた。それが慈愛の実戦であり、キリストの実践であると言っていたのに、どうして今、その信念を話そうとしないのですか?
麻原は英語みたいな独り言を呟くだけ‥証言がオウム武装化の話に入ると、麻原は体を激しく揺らし、ヒステリー症状を起こした挙句の果てに
井上証人、私は精神病だと思われているだろうな(そうでない様)飛んで(空中浮遊)みくれ
井上は憐れむように呟いた
‥この人はバカだ‥
井上が他の被告人の公判廷で証言したのは93回(麻原の公判廷20回)麻原と対峙した
この現実世界には私たちの本質から切り離されていない。どんなものにも、その存在の本質の重さがある。その生命を救済の名の下に、邪魔だからとか必要ないとか言って破壊することがあってはならない
理想の父は麻原彰晃ではなく父だった
家族を養うために朝早く起きて電車に乗って一生懸命 仕事して、喧嘩もする。子供に起こり過ぎたこともある。失敗ばかりする。でも家族を誰よりも愛している
最も尊いのは解脱修行する人間ではない
救世主は尊師でもなく予言者ではない
蛇口をひねれば綺麗なお水が出てくる。配管工のみなさん。水道局の人ありがとう。社会の土台を作っている 公務員、医者、看護婦、教師、警官、消防士、大工、営業、受付
本当の救世主とは、朝、早く起きて電車に乗っ仕事をしている こうした名もなき人たちなのだ
解脱はグルのコピー人間になることでない
食い違う証言
井上の証言は「検察側に沿った都合のいい証言」で他の信者とはくいちがっていた。教団からは「裏切り者」と呼ばれた
マスコミからも自己保身といわれた
麻原の弁護士は地下鉄サリン事件は井上が考え、主導した説を持ち、ほかの被告から井上主導説を引き出そうとしていた
「他人に罪をなすりつけ 糾弾する自分に陶酔している」
被害者遺族から「罪を償うと言っているが 響いてこない」
と厳しい糾弾は続いた
井上君は自分だけ蜘蛛の糸で助かろうとしている(新実)
2000年6月 無期懲役判決
判決に井上は泣き崩れた。しかし「無辜の人間をあれだけ死に追いやって自分だけは助かりたいのか」と非難の声があがる。検察は上訴した
2004年5月 東京地裁死刑判決
井上は覚悟を決めた様子で冷静に構えたが、目の前には涙で顔をくしゃくしゃにした母と悲痛な顔を歪ませてじっと目を瞑っていた父の姿が目に焼きついた
それはオウムテロ事件で愛する家族を奪われた瞬間に見せる遺族の嘆きときっと同じ姿だったろう
井上の両親にとっては16歳の息子が如何しい男に騙されたのを止めらなかった報いなのか
オウム死刑囚のうち、無期懲役から死刑になったのは井上だけ
井上証言が麻原を有罪に持ち込めたのた
井上証言は検察にとって都合の良い証言だった
洗脳された人間を手っ取り早く洗脳から解放するには別の洗脳をかけるのだ
井上は嘘をついているわけではなく、検察から逆洗脳されたと考えた方が妥当
井上証言が麻原を有罪に追い込んだ。検察は井上を利用するだけ利用して突き落とした。天界に引き上げた後、地獄へ突き落とした
希望
この判決後、洛南高校の恩師虎頭先生の呼びかけにより井上を「生きて償う」会を発足された。井上の支援の会に真言大谷派の鈴木君代という「歌う僧侶」が参加する。鈴木は手紙のやり取りや面談を重ね井上を常に励した
鈴木は両親の離婚から過呼吸に苦しみ子供の時くから自殺を考えていた。お寺に預けられた鈴木は「何のために生まれてきたのだろう?」と悩み中学生から仏教を学び始めた
私自身が、出会う人を間違えたら、立場が逆になっていたかもしれなかった
君代の面会は井上にとって癒しとなった
2009年12月 最高裁死刑判決が確定した
死刑囚はいつ自分の刑が下るのか知らされない(かつて日本は死刑の日の前日に知らせていました。伝えると自殺してしまう人がよくいた為)ある朝、いきなり死刑執行を告げられる。出された朝ごはんはほとんどの人が食べ残すという
お釈迦様は、自分の師から離れ、自立していきます‥しかし、私はオウムの中でただ「盲信」してしまい、おかしいと思っても、ただ黙っていました。そこには私の弱さがあったんです。その意味で、私は、全ての罪は我が身にあり、と思ってます
井上は生きて償うのではなく、毎日 死の恐怖にに怯えながら麻原を盲信したという罪と向き合う償いを国から言い渡された
プライド
グルの意思だけが救済だと思っていたけど、自分の意識の中だけはどことなくぷライドを満たすところがありました。結局私は弱い人間だった。救済と言いながら自分のことしか考えていない。修行中として自分は駄目なんだといことはっきり自覚しました
2018年7月6日 死刑執行
まえを通り過ぎようとしたとき、目があった。泰然自若。動揺する事なく、至極立派な態度で去っていった(おなじ拘置所に収容されていた未決囚)
ご両親に何か伝えることは?
お父さん、お母さん、ありがとう。心配しないで。こんなことになるとは、思ってもいなかった
まずは、よし
(享年48)
オウムに入信した若者はみな感受性が強く、真面目、ピュアで世に厭世的だった。無常感を乗り越えた釈迦のように解脱したり、悟りを開きたかっただけだった。騙されて洗脳され数々の凶悪事件と関り、無辜の人を殺め、国家から死刑をくだされた。誰しもが自分がテロリストになり処刑されるなんて思いもよらなかっただろう
こうして 18歳で出家した井上嘉浩は30年ぶりに家族の待つ家に帰った。母親は抱きしめ「よっちゃん。よっちゃん」と号泣した
嘉浩の父でございます。昨夜嘉浩が初めて家に帰ってまいりました‥そこで私どもは、親子4人で一夜を明かすことができました‥兄が棺に「よっちゃん、よく頑張ったね」と叫んでいました。私はそれを耳にしながら、23年前、オウムが起こした事件の多くの被害者の方に思いを致しました。皆さん、こんな気持ちで苦しまれたのだろう、と点滴多くの方を苦しめていることを、あらためて考えました。心から、本当に心から、被害者の方々のご冥福をお祈りしたいと思います(葬儀の父の挨拶)
井上の両親は300万円をオウム被害者の会に寄付した。家族もまた生きている限り十字架を背負うのだろう
罪を犯しても洗脳が解けない頑なな息子に対し、家族は一切責めず真実を話すように励まし続けました。父親の手紙に感銘を受けてブログに記しました。両親の人格が子供に投影する
カルト信者はなぜ嘘をつく
カルト信者は嘘を吐息のように吐きます。カルト信者は自分が正しいと信じています。事実をねじまけても自分は正しいと言い張ります。ただし、人を騙そうという意図はありません。他人からみたらバレバレの嘘をつきます。でも 彼ら的には「真実」です
承認要求
カルト信者は元々承認要求が強い方か多いのです
「真の宗教」に選ばれた私は凄い!
という思いがあります。それは麻薬の様に気持ち良くクセになります
井上少年も「正義の人」になりたいと願いそのためにオウムに入信しました
カルトでは以前の人格を捨て 生まれ変わるように新しい人格を身につけよとおしえます
麻原は井上にアーナンダーというホーリネームを与えました
井上少年は井上嘉浩を捨て、アーナンダーという新しいカルトの人格を身につけます
以前の人格の表層にカルトの人格が上乗せされるのです
オウムの正義とは
麻原の言うことを何も考えずただ従うこと
オウムの悪とは
麻原に従わないこと
麻原に帰依(従わない)悪人たちを正しい方向に導くこと(ポア)
カルトの人格 アーナンダーは麻原の与えた正義を何も考えずロボットのように従います
井上が殺人から逃げた心理
私はエホバの証人の勧誘活動を自分の意思に反してやらされました。あれは「終わる終わる詐欺」です。反社会行為ですから極力やらないように、他者を誤った道に誘導しないよう即答で断ってもらうようにしました。悪から回避していました
井上は麻原からポア(殺人)の指示を受けてもカルトの人格はそれに逆らえません
しかし、奥に眠る井上嘉浩の人格が「殺人をしたくない」と殺人実行から回避しようとします
洗脳が解けた時 カルトの人格アーナンダーは消え元の人格井上嘉浩16歳に戻ります
価値観はひっくり返ります
麻原に従うことが正義から
法律に従うことが正義に変換されます
井上嘉浩にとっては麻原は詐欺師で悪です。オウムは反社会的です。だから麻原を糾弾することをはじめたわけです
洗脳中と洗脳後は別の人格です
洗脳された人間は二つの人格がある
洗脳後はカルトの人格は消えます。これは 一般の世界の人から見たら終始一貫性がなく、責任転嫁をする「嫌な奴」にしか見えません
大義
教団内では麻原の指示するワークは何もかもこの大義のために深い意味があるとされていました
罪とは大義である神々の意思に基づくグルの意思に逆らうことでした‥善悪の基準はグルの意思の一点にありました
そのためグルの意思に逆らう発想がまずありませんでした
当時を振り返りますと、私はこのような大義を盲信することで
善悪の判断を麻原に委ね、自己の言動に対する人としての責任感を放棄していました
グルの意思の実践は救済のお手伝いであり、自分の修行にもなると良い子ぶった善人意識を自己満足させていました
突き詰めますとこのような私の大義への妄信といい子ぶった自己満足が私自身を人格の崩壊まで追い詰め、数々の犯罪行為に関与してしまう「罪人」にしていったのです
罪を償う
洗脳が解けた井上は罪と向き合った。自分のようにカルトに騙される若者を一人でも減らそうとSNSで発信していた。彼は間違いなく真理の求道者であった
私が事件に関わってしまったのは、このような私の欲望が原因でした‥私は、プライドや自尊心や傲慢さや思い上がりによって自分の良心を殺し続けていました。だからこそ他者の人生を実感せず、他の弟子のことも考えず、殺人を手伝えたのだと思います。私は良心を殺すことによって、他者の命をとでも言うべき尊厳性を否定していました(井上、カルトを抜けて罪と向き合う)